名古屋市の子宮がん検診にかかる費用と頻度

名古屋市では子宮がん検診を推進しています。対象年齢は20歳からで、受診回数は2年に1回です。検診料(自己負担分)は500円です。

厚生労働省は「女性特有のがん検診推進事業」を行っています。これは子宮頸がん検診と乳がん検診の受診促進のために行われているものです。子宮頚がんでは20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の方を対象に無料クーポン券を配布しています。それを利用すると無料で子宮頚がんの検診が受けられます。名古屋市民の場合は対象者に名古屋市から無料クーポン券が送られます。クーポン券が到着したら忘れないうちに受診しましょう。

性交渉が始まったら、ぜひ子宮がん検診をお受けください。
女性特有のがん検診推進事業についての詳しい情報は名古屋市公式ウェブサイト「名古屋市が実施している子宮がん検診の紹介」に記載されています。

子宮がん(子宮けい癌と子宮体癌)とは

 

子宮は全体として中が空洞の西洋梨の形をしています。球形に近い形の体部(たいぶ)は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は腟へと突出しています。この部分が頸部(けいぶ)で、腟の方から見ると奥の突き当たりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入り口があり、この入り口を外子宮口(がいしきゅうこう)と呼んでいます。
子宮がんには、子宮体がんと子宮頸(けい)がんがあります。子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれます。胎児を育てる子宮体部の内側にある子宮内膜から発生します。

最新のがん統計データ(国立がん研究センター がん情報サービス)によると
2016年の1年間に子宮頸がんは2,710人、子宮体がんは2,388人の方が亡くなっています。
2013年の1年間に子宮頸がんは10,520人、子宮体がんは13,004人の方が診断されています。
子宮頸がんは10万人あたり16.1人、子宮体がんは19.9人の罹患率があり、
子宮頸がんは78人に1人、子宮体がんは65人に1人の罹患リスクだそうです。
5年相対生存率は子宮頸がんが73.4%、子宮体がんが81.1%です。

子宮けい(頸)がんはどんなものでしょうか

子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分から発生します。子宮の入り口付近に発生することが多いので、普通の婦人科の診察で観察や検査がし易いため、発見され易いのです。
子宮頸(けい)がんの発生には、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus:以降HPVと省略して記載します)の感染が関連している事がわかってきています。患者さんの90%以上からHPVが検出されています。喫煙も子宮頸がんの危険因子であることがわかっています。子宮けいがんは30歳代後半〜40歳代に多く発症しますが、最近は、若い女性で増えている傾向にあります。

HPVは世界中のどこにでもあるごくありふれたウイルスです。このウイルスは主に性交渉で感染し、女性の8割が一生に一度は感染すると言われています。HPV には、200 種類以上の遺伝子型(タイプ)が同定されています。子宮頸がんをはじめとするHPVに起因するがんから検出されるHPVをハイリスクHPVと言います。ハイリスクHPVには、HPV16,18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 66, 68 型が含まれます 一方、尖圭コンジローマなどの良性のイボから検出されるHPV をローリスクHPVと言い、HPV6, 11, 42, 43, 44型が含まれます。ハイリスクHPVに感染しても、ほとんどの場合感染は一過性で、ウイルスは自然に体の外へ排除されてしまいます。

ごく一部のケースで感染が長期間にわたって持続し、がんが発生すると言われています。ハイリスクHPVに感染した人でがんを発病するのは1〜2人/1000人ぐらいです。だから決して多い数字ではありませんが、かといって軽視できるものでもありません。

厚生労働省では、子宮けいがんワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認されたことから令和3年11月26日にHPVワクチン接種差し控えの状態を終了しましたが、ワクチン接種対象年齢(小学校6年~高校1年相当の女子)ではない方は特に、子宮けいがん検診を受ける事こそが子宮頸がんの予防・早期発見につながる上で大変重要なことです。

子宮けいがんワクチンの説明を詳しくみる>>>

子宮体がんはどんなものでしょうか

子宮は、奥の方にある子宮体部と、子宮の入り口にあたる子宮頸部に分けられます。
子宮体部の壁は、内側から、内膜(ないまく)、筋層(きんそう)、漿膜(しょうまく)からできています。子宮自体は筋肉でできていますので、筋層が一番分厚くなっています。内膜は毎月卵巣(らんそう)から出るエストロゲンやプロゲステロンの作用によって分厚くなって受精卵(じゅせいらん)が着床(ちゃくしょう)し易くなるように準備されていきます。妊娠(着床)しなければ月経血となって体外へ排出されます。こうして毎月月経が来る訳です。子宮体がんは内膜から発生するもので、子宮内膜がんとも呼ばれます。筋層は上述のように筋肉ですので、ここから子宮筋腫が発生します。まれに筋層から子宮肉腫(しきゅうにくしゅ)が発生します。これは子宮筋腫の悪性化したものとなり、子宮体がん(子宮内膜がん)とは全く違う病気です。

子宮体がんは40歳代から多くなり、50歳代から60歳代の更年期の前後で最も多くがんと診断されています。しかし、30代でも発症することがあります。近年は食生活の欧米化などに伴い増加しているといわれています。

子宮体がんに最もよくみられる症状

子宮体がんに最もよくみられる症状は不正性器出血(不正出血)です。閉経後の出血のほか、閉経前では月経と無関係な出血、月経時の出血量が多い、おりものに血が混ざるなどの症状がみられます。また、月経不順、下腹部の痛み、排尿時の痛みなどが出ることもあります。不正性器出血は量が少ないと茶色くなったり、出たり出なかったり(出る日があったり出ない日があったり)します。こうした茶色いおりものや断続的出血が2週間続いた場合は「異常だ」と判断して受診されることをお勧めします。また、健康診断で行われる子宮がん検査は子宮頸がんの検査を指すことが多いので注意が必要です。名古屋市の子宮がん検診では不正性器出血が認められた方には子宮体部(内膜)の細胞診も行えます。症状に気づいたら 早めに子宮がん検診を受診することが子宮体がんの早期発見につながります。

子宮体がんは、エストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続くことが原因で発生する場合と、エストロゲンとは関係ない原因で発生する場合がありますが、約8割はエストロゲンの長期的な刺激と関連していると考えられています。エストロゲンが関係していると考えられる子宮体がんでは、肥満、閉経が遅い、出産経験が無いなどの場合に、発症のリスクが高くなることがわかっています。また、乳がんの治療でタモキシフェンという薬剤を投与されている場合も、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。

子宮頸(けい)がん検診

子宮頸がんの予防・早期発見には、子宮けいがん検診を受ける事こそが大変重要です。
子宮頸がんは、異形成(いけいせい)という前がん状態を経てがん化することが知られており、がん細胞に進行する前に、正常でない細胞(異型細胞というがん細胞になる前の細胞)の状態を細胞診という検査で見つけることができます。
異形成の段階では無症状のことが多いので、婦人科の診察や集団検診でしか発見することができません。月経でない時や性行為の際に出血する、普段と違うおりものが増えるといった気になる症状があるときは、受診される事で早期発見につながります。
最近では、子宮頸がんの発生が若い人に増えていることや、晩婚化に伴い妊娠年齢が上昇していることから、妊娠中にがんが発見される機会も多くなっています。がんが早期であれば、妊娠継続とがん治療の両立が可能な場合もあります。進行がんでは、母体の救命を優先させる治療を行うこともあります。

子宮頸がんの細胞診

まず子宮がん検診の検査としてあげられるのは細胞診です。がん検診のときは通常細胞診のみを行います。
細胞診というのは、正式には子宮頸部と腟部の細胞診のことです。
実際どのように行われるかというと、子宮頸部というのは直径2センチメートルほどの大きさで、ちょうど事務用の液体糊の蓋くらいの感じです。その中央に外子宮口が開いています。子宮口の周辺を専用の採取器具を用いて擦ります。すると採取器具に子宮頸部の表面の細胞が付着します。採取器具をスライドグラスに擦り付けると細胞がスライドグラスに付着します。それをすぐにアルコール固定をして、染色をして検査する訳です。通常、染色からは検査センターに依頼します。検査センターでは染色して細胞診の検査師という方が顕微鏡でチェックして結果を返却してくれるようになっています。子宮の入り口を器具で擦るというと痛いように感じるかも知れませんが、実際多くは違和感を感じる程度です(擦られているのはわかるという感じです)。
その結果異形成やがんが疑われた時には、精密検査として組織診を行います。コルポスコープ診(腟拡大鏡による診察)を行うこともあります。進行がんが疑われる場合には、がんの広がりをみる検査として、内診、直腸診、超音波検査、CT 検査、MRI 検査などがあります。また膀胱鏡、直腸鏡、尿路検査などが行われることもあります。

内診と超音波検査

産婦人科医ががん検診を行う場合は内診も行われます。内診によって子宮筋腫や卵巣腫瘍の有無、子宮やその周辺に痛みがないか、子宮の可動性は良いか等についてわかります。内診で所見があれば超音波検査などが追加になる場合があります。
当院では、せっかく来られた気持ちを大切に超音波検査も併せて実施しています。

子宮頸がんの検査判定と治療方法

子宮頸がんになっていないことが望まれるのですが、検査の結果により、病期がわかります。病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「ステージ」ともいいます。病期には、ローマ数字が使われ、がんの大きさだけではなく、粘膜内にがんがどの程度深く入っているか、リンパ節転移や肺などの遠隔臓器への転移があるかどうかで、Ⅰ期(1期)、Ⅱ期(2期)、Ⅲ期(3期)、Ⅳ期(4期)に分類されています。(もっと細かく分類されていますがここでは省略します)

病期が決まるとそれに応じた治療が行われます。子宮頸がんの治療としては、手術(外科治療)、放射線治療、化学療法(抗がん剤による治療)があります。治療はがんの病期(ステージ)だけでなく、年齢、合併症の有無など患者さんのそれぞれの病状に応じて選択されます。

子宮体がん検診

子宮体がんの検査では、子宮内膜を少しとり、細胞と組織に異常がないかを調べる病理検査・病理診断を行います。名古屋市の子宮がん検診の場合は上述のように子宮内膜の細胞診を行えます。

内膜の細胞診は専用の器具(細いチューブのような感じです)を子宮の内腔(ないくう)へ入れて、子宮内膜の細胞を少し採って、それを検査します。内腔というのは子宮の内側の空間のことです。子宮の内側の奥の方まで器具を入れるということになるので、検査の時にチクっとした痛みを感じる場合があります。この検査で異常が検出されなくても不正性器出血が続く場合は子宮内膜の組織検査を行う必要があります。もちろん細胞診で異常が認められたら組織検査を行います。子宮内膜細胞診は初期がんや病変が小さいもの高分化型がんではがんが見落とされる場合があるので、症状(出血)が続く場合はしつこく検査をして追求する必要があります。

細胞診と組織検査には違いがあります。細胞診は細胞ひとつひとつを診ており、組織検査は組織という細胞が集まって臓器としての一定の形態になっているものを全体として検査しているということです。もっと簡単に言うと、組織検査はたくさん検体が取れて詳しく診断できると言う訳です。

子宮体がんの検査には超音波検査も有効です。子宮内膜が厚い場合は細胞診・組織検査を行うことも考慮されます。

子宮体がんも子宮頸がんと同じように前がん病変という状態があります。子宮内膜増殖症という病気です。この病気には子宮内膜増殖症(しきゅうないまく ぞうしょくしょう)と子宮内膜異型増殖症(しきゅうないまく いけい ぞうしょくしょう)があります。子宮内膜増殖症は子宮内膜が過剰に増殖した(増えている)とお考えいただければ良いです。子宮内膜異形増殖症は細胞異型を伴う子宮内膜の過剰増殖です。異型を伴いますので正常と異なる細胞が出てきているということです。場合によっては一部にがんが混ざっていることもありえますのでさらに詳しく検査する必要があるということになります。

子宮体がんの検査判定と治療方法

子宮体がんになっていないことが望まれるのですが、万が一なっていた場合、がんの広がりをみる検査として、内診、直腸診、子宮鏡検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などがあります。
これらの検査の結果、病期がわかります。病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「ステージ」ともいいます。病期には、ローマ数字が使われ、がんの大きさだけではなく、子宮筋層内にがんがどの程度深く入っているか、リンパ節転移や肺などの遠隔臓器への転移があるかどうかで、Ⅰ期(1期)、Ⅱ期(2期)、Ⅲ期(3期)、Ⅳ期(4期)に分類されています(もっと細かく分類されていますがここでは省略します。内容は子宮頸がんの分類とは異なります)。

子宮体がんの最終的な病期は、手術の結果、がんがどの程度広がっているか判明した時点で決まります。このため、術前に推定される臨床病期とは一致しないことがあります。

子宮体がんの治療は、手術(外科治療)でがんを取り除く事が基本になります。患者さんの状態やがんの広がりに応じて、放射線治療、化学療法(抗がん剤による治療)、ホルモン療法を組み合わせて行います。