インフルエンザ予防と治療
診療案内
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インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症です。なので「かぜ」のような症状が出るのですが、それだけではなくて重症な事態になることがあります。ですから、「一般のかぜ症候群」とは分けて考えて、「重くなりやすい疾患」と認識してください。なぜインフルエンザというのかということですが、流行が周期的に現われるので、16世紀のイタリアの占星家たちはこれを「星や寒気の影響(influence)」によるものと考え、インフルエンザというようになったと言われています。
典型的には、A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われます。その後で咳、鼻汁(はなみず)などのかぜ症状が出てきます。1週間程度の経過で良くなってくる感じです。普通の「かぜ」は咳やはなみずが主体ですが、発熱などの全身症状が出て辛くて重症なところが「かぜ」とは異なります。
とくに、高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ方、糖尿病などの代謝疾患のある方、免疫機能が低下している方では、重症化しやすいです。原疾患(元々持っている病気)が悪化することと、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなり、入院や死亡の危険が増加します。小児では中耳炎の合併、熱性けいれんや気管支喘息を誘発することもあります。
また、幼児を中心とした小児において、急激に悪化する急性脳症(きゅうせいのうしょう)が増加することが知られてきています。厚生労働省「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」で行った調査によると、毎年全国で50~200人のインフルエンザ脳症患者が報告されており、その約10~30%が死亡しているそうです。臨床経過や病理所見からは、ライ症候群とは区別される疾患と考えられていますが、原因は不明です。現在も詳細な調査が続けられています。 ライ症候群稀な疾患ですが、これについては治療の項目で少し触れます。
毎年世界各地で大なり小なりインフルエンザの流行がみられます。温帯地域より緯度の高い国々での流行は冬季にみられ、北半球では1~2月頃、南半球では7~8月頃が流行のピークです。熱帯・亜熱帯地域では、雨季を中心としてインフルエンザが発生するそうです。
わが国は温帯地域ですから、インフルエンザの発生は1〜2月ごろになります。毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンです。時には夏季に患者が発生し、インフルエンザウイルスが分離されることもあり驚きます。流行の程度とピークの時期はその年によって異なります。
インフルエンザは、ウイルスが病原体です。「かぜ」も色々なウイルスで起こるのですが、インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染して起こります。インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があります。流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。A型とB型ウイルス粒子表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があります。とくにA型では、HAには15種類、NAには9種類の抗原性の異なる亜型が存在し、これらの様々な組み合わせを持つウイルスが、ヒト以外にもブタやトリなどの動物にも広く分布しています。
A型のインフルエンザはHAやNAの型が少しずつ変化します。難しく言うと連続抗原変異と言います。少しずつ変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。これが季節性インフルエンザです。一方、HAやNAが突然変化してそれまでのインフルエンザウイルスに置き換わってしまうことがあります。難しく言うと不連続抗原変異なのですが、これが新型インフルエンザです。多くの国民が免疫を獲得していないことから、全国的に急速にまん延することが起こり得ます。新型インフルエンザは、いつどこで発生するのかは、誰にも予測することは困難です。
色々な診断法がありますが、通常は疑わしい方に対してインフルエンザ抗原検出キットを使って診断されることが多いです。
従来は対症療法(熱を下げるなどの症状を抑える治療)が中心でした。今でも元気な人や抗ウイルス薬の投薬時期を過ぎてしまっている場合には行われます。近年は抗インフルエンザウイルス薬が開発されてきており、適切に使用すると症状を軽くできるので使用されます。
対症療法としては解熱剤を使用したり、肺炎や気管支炎を併発して重症化が予想される患者に対しては、これらの合併症を予防するために、抗菌薬の投与が行われたりする場合もあります。解熱剤、特にアスピリンは、ライ症侯群との関係が推測されています。ライ症候群は非常にまれな病気ですが、脳の炎症や腫れと、肝機能の低下または喪失をもたらし、生命を脅かすことがあります。ライ症候群の原因は不明ですが、一般的には、インフルエンザまたは水痘(水ぼうそう)などのウイルス感染症の後にみられ、特に感染症にかかっている間に アスピリンを服用した小児によくみられます。今ではアスピリンの使用が減ったため、この症候群は稀なものになっています。解熱剤が必要な場合は、なるべくアセトアミノフェンを使用するようになっています。インフルエンザ脳症の治療に関しては確立されたものはなく、臨床症状と重症度に応じた専門医療機関での集中治療が必要です。
ここは厚生労働省のホームページに具体的な記載があり、そこから引用しました。「かかったかもしれない場合」も含みます。
などを守ることを心がけてください。
ちなみに不織布製マスクとは:不織布とは「織っていない布」という意味です。繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させて布にしたもので、これを用いたマスクを不織布製マスクと言います。一見、紙のようにも見えます。
また、インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロと歩き回る等の異常行動を起こすおそれがあります。インフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい。なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いことが知られています。
以下の対策例があります。この対策例も厚労省ホームページから引用しました。
1.転落等の事故に対する防止対策の例
(1)高層階の住居の場合
(2)一戸建ての場合
2.異常行動の例
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。そのためにウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。
現在、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。
インフルエンザは毎年型が違ってきます。上記の病原体についてお話ししたところの連続抗原変異によるものです。ですからインフルエンザワクチンは毎年インフルエンザの専門家会議でどの型に対応するものを使用するのかが決められます。A型が2種類とB型が2種類です。毎年型が変わりますので、基本的には毎年接種するのが良いです。インフルエンザが流行する時期を考慮して12月中旬までには接種を終了するのが良いでしょう。特にインフルエンザにかかったら重症化しやすい人、
このような方々には接種をお勧めします。
インフルエンザワクチンは定期接種の扱いになります。健康保険の対象ではなく、自費での診療ですが、名古屋市から助成があります。年度によって異なりますので、最新の情報は、名古屋市のホームページをご覧ください。
具体的には名古屋市民で、次の条件のいずれかにあてはまり、かつ、接種を希望する方
詳しくは名古屋市のホームページをご覧ください。毎年10月になったら今年度の内容のホームページが出来ているのではないかと思います。
令和6年度高齢者を対象としたインフルエンザ予防接種(名古屋市サイト)
ワクチンの接種回数は、生後6か月〜12歳まで(13歳未満)は2回接種です。13歳以上は1回接種です。ワクチンの量は、生後6か月から2歳まで(3歳未満)は0.25mL、3歳以上は0.5mLです。
予約受付は、ワクチン供給時期になりましたら「重要なお知らせ」に掲出いたしますので、ご確認ください。
尚、2024年10月からインターネットによるインフルエンザワクチン接種のご予約がいただけるようになりました。