妊婦健診(にんぷけんしん)はどういうもの?

妊娠中の母体の体調は20年後のご自身の体調と同じくらいだとも言われます。つまり、体力の余力が少なくなり、無理が利かなくなるのです。妊娠前の状態ならちょっと無理しても翌日にはなんとも無いと思いますが、妊娠すると疲れが取れなくてお腹が痛くなってきて性器出血も起こします。ひどくなると流産や早産を起こしてしまします。ですから、妊娠中は大事に過ごしていただきたいと思います。

妊婦健診(にんぷけんしん)は母体と赤ちゃんが順調に経過しているかについて診察するものです。妊婦と胎児の「健康診断」と捉えていただくとよろしいです。健康診断ですから、結果的に正常に経過していれば受診しなくても済んでしまうのですが、知らないうちに異常な事態になっていて妊婦自身が気付く症状が出てからではかなり病状が進んでしまっているということも起こりえます。

適切な回数の妊婦健診を受けた妊婦はそうでない妊婦に比べて周産期予後(お産前後の経過)が良好であるという報告もあります。フィンランドやノルウェー、米国では我が国と同じ14回程度の健診が行われています。

妊婦健診では通常、体重測定(体重の変化が適正かどうか)、血圧測定、尿検査(尿糖・尿蛋白の検査)、下肢の浮腫の有無(浮腫の評価)、腹囲の測定、子宮底長の測定、児心拍の確認といったことが行われます。その他に、妊娠初期、中期、末期に合わせて色々な検査(血液検査、感染症の検査、子宮頸癌の検査、超音波検査)が行われます。

名古屋市の妊婦健診助成

名古屋市では妊娠届(下の方で詳しく説明しています)を保健所へ提出すると、母子手帳と妊婦健診票(14回分)・妊婦の歯科健診票・乳児健診票をもらえます。妊婦健診票というのは妊婦健診に対して名古屋市が金銭的に補助をするものです。当院で妊婦健診票を使った妊婦健診を行いますと基本的には無料で診察を受けられます。妊婦健診票を見ると、それぞれの健診票についていくらの金額が名古屋市から補助されているかがわかります。尚、妊婦健診票(これは無料券ではなくて補助券の扱いです)がない場合は実費がかかりますのでご注意ください。

名古屋市の「妊娠中の保健指導と健康診査」ページはこちら(外部リンク)>>>

当院では妊婦健診の時には都度超音波検査を実施

当院では、妊婦健診の時には毎回超音波検査を行っています。名古屋市の場合は妊婦健診の中で、超音波検査を4回行うことができますが、この場合は(4回しか機会がないので)1回の超音波についてかなり時間をかけて詳細に診る必要があります。赤ちゃんの姿勢によっては十分に検査できないこともあります。ですから当院では毎回超音波検査をすることにしています。その方が1回あたりの時間が短時間で済みますし、頻度が上がる方が異常の発見がしやすくなります。もし異常があるのならば、早く見つかった方が詳細に検討する時間が得られます。当院では異常があれば早く見つけて差し上げたいと思っています。当院のモットーは「すこやかな女性をはぐくみたい」ですので、妊婦さんの不安を早く払拭することが大事であると思っています。安心して妊娠生活を送られるように、丁寧に妊婦健診をしていきます。

なお、超音波検査には2D(白黒の断層像を見る検査)と3D・4Dと言った赤ちゃんを立体的に見る検査があります。3Dは静止画です。4Dは3Dが動画で見られる検査です。赤ちゃんの動きがそのまま見られます。2D検査は毎回行いますが、3D・4D検査はオプション扱いで別料金になります。3D・4Dはお腹の上から見る超音波検査装置に装備しております。赤ちゃんに対する愛情が高まれば幸いです。

動画の説明
この動画は当院にある最新の4D超音波装置で撮影された動画です。
もちろん当院で撮影されたもので、妊婦さんの承諾を得て掲載しております。
妊娠30週の胎児の様子です。
目を開いたり、口を開いたり手を動かしたり(手は顔の前ではっきり写っていませんが)しています。

話は戻りますが、妊婦健診の診察の結果はその時にお話しします。(血液検査などすぐには結果が出ないものは次回の結果説明となります)毎回の診察で、それぞれの妊婦さんが疑問に思っている事などにもお答えしながら診察していきます。実際に当院ではどのように妊婦健診が行われているのかについて記載します。妊婦健診票は妊娠週数や症状によって多少前後して使用されることがあります。

妊婦検診費用お支払いのご注意
※妊娠の診察は、保険証をお持ちでありましても自費診療となりますので実費が必要となります
※母子手帳に付属の「妊婦健診票(これは無料券ではなくて補助券の扱いです)」がない場合は実費がかかりますのでご注意ください(現金またはクレジットカードでお支払いできます)

妊婦健診のスケジュールと健診内容

妊娠5週頃(妊娠2か月)の妊婦健診

予定された月経が発来せず、妊娠したかもしれないということで(市販の妊娠判定薬で陽性になったので)受診されます。これが初めての診察ということになります。まだ妊娠している所や子宮が小さくて、お腹からの超音波では見えないこともあって、内診と腟からの超音波検査を行って無事に妊娠が始まっていることを確認します。この時点ではまだ妊娠が始まったばかりで、正常な経過でも赤ちゃんの心拍は確認できません。妊娠確認は、病気の範ちゅうではないという位置づけになっていて保険適用外です。その為、妊娠5週(妊娠2か月)では、1万円ほどの実費がかかります。

妊娠7週頃(妊娠2か月)の妊婦健診

上記の診察から2週間後の診察です。内診と腟からの超音波検査を行って無事に妊娠が進んでいるかという事と胎児の心拍を確認します。赤ちゃんの心拍が確認できたら妊娠届と言って母子手帳を入手するための用紙を作成します。この用紙を保健所へ持って行って母子手帳とその別冊(妊婦健診票が入っています)をもらってきてください。妊婦健診票とは名古屋市が妊婦健診に対して費用補助を行うものです。妊娠の経過診察と妊娠届の作成を行う妊娠7週(妊娠2か月)の診察では、1万円を超える実費がかかります。

妊娠9週頃(妊娠3か月の妊婦健診

さらに2週間経ちました。この時には保健所で入手した母子手帳もお持ちください。ここで、第1回の妊婦健診票を使います。この段階から上記に記載した妊婦健診を行います。体重測定、血圧測定、下肢の浮腫の有無、腹囲の測定、子宮底長の測定などです。さらに今回は妊娠初期の血液検査と子宮頸がん健診を行います。(子宮頸がん健診は最近行われた方は不要ですので行いません)この頃になると赤ちゃんが2cm程度になっており、腟からの超音波検査で赤ちゃんの大きさから分娩予定日を決めます(今回までは毎回内診があります)。この段階以降では、母子手帳に付属の妊婦健診票をお持ちでない場合は実費がかかり、妊婦健診となるこの妊娠9週(妊娠3か月)では1万円ほどの実費がかかりますのでご注意ください。妊婦健診票を初めて使うこのタイミングから、実感がますますわいてくるというお声をよく聞きます。

妊娠11週(妊娠3か月)の妊婦健診

第2回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査と前回の結果説明をします。前回の検査結果により必要があれば追加検査を行うことがあります。

妊娠15週(妊娠4か月)の妊婦健診

第3回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査を行います。今回からしばらくは4週間に1度の健診間隔です。

妊娠19週(妊娠5か月)の妊婦健診

第4回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査を行います。今回は内診を行います。子宮頸管長(子宮の入り口にあたる部分の長さ)を測ります。ここは赤ちゃんから見ると出口側になります。妊娠の維持に重要な部分で、この時点ではしっかりと固く閉じていて長さも3cm以上あります。この長さが短くなっているということはお産の時の状態に近づいているということになり、流産や早産の恐れが出てしまうというわけです。今回は貧血の検査(採血検査)も行います。妊娠が進むにつれて貧血になりやすくなります。通常はこの時点ではまだ正常値であることがほとんどですが、中には貧血が始まっている方もあります。貧血になっている妊婦さんには治療をします(鉄剤の内服をします)。

妊娠23週(妊娠6か月)の妊婦健診

第5回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査を行います。次回からは健診間隔が2週間間隔になります。お腹も大きくなってきて母体の負担も大きくなり、いろいろな異常が起こりやすくなってくるためです。

妊娠25週(妊娠7か月)の妊婦健診

第6回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査、貧血の検査を行います。

妊娠27週(妊娠7か月)の妊婦健診

第7回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査・血糖検査(後期)、ヒト白血病ウイルス-1型抗体検査(採血検査)を行います。

妊娠29週(妊娠8か月)の妊婦健診

第8回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査、性器クラミジア検査(内診)を行います。性器クラミジアは子宮頸管に感染する病原体で、早産を起こしたり、(早産を起こさなかった場合でも)産道を通過する赤ちゃんに感染して結膜炎や肺炎を起こすことがあります。クラミジアが居れば出産までに治療する必要があるのでこの時期に検査します。その他前回の検査結果についてもご説明します。

妊娠31週(妊娠8か月)の妊婦健診

第9回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査を行います。前回の検査結果についてもご説明します。

妊娠33週(妊娠9か月)の妊婦健診

第11回妊婦健診票を使います。妊婦健診・2D超音波検査、貧血の検査(採血検査)を行います。

当院は分娩は行っておりませんので、多くの場合はここで当院の妊婦健診は最後になります。この後は分娩されるところで健診をお受けいただくことになります。当院はご挨拶のページでも申し上げましたが、丹田呼吸法を利用した分娩を行ってきました。妊娠・分娩に関しては人一倍の思い入れがあります。分娩取り扱いを中止しても今までの経験を生かして無事に妊娠・分娩がスムーズに経過できるようにサポートさせていただきます。
なお当院は日本赤十字社 愛知医療センター 名古屋第二病院(八事日赤)のやごと周産期ネットワーク(やごと周産期ネットワークサイトに移動します)に加入している医療機関で、八事日赤で分娩予定の方の妊婦健診を当院で行うことができます。当院は夕方や土曜日も外来診療をしていますのでお忙しい方やご主人も赤ちゃんの超音波が見たいという方が来院されやすいと思います。

また、当院や近隣の医療機関で分娩されず、離れたご実家で分娩される予定の妊婦さん(つまり、里帰り分娩される方です)も妊婦健診しています。安心して妊娠生活を送られるように、丁寧に健診をしております。当院では、交差感染防止の観点やより丁寧な健診を実施するために妊婦健診を月曜日・水曜日・金曜日に実施しています。どうしてもその曜日では難しいということがありましたらご遠慮なくご相談ください。