プレコンセプションケアのすすめ
~いつか妊娠するかもしれない方へ~

いつの時代でも「元気な赤ちゃんがほしい」というのは、妊婦さんやご家族の一番の願いでしょう。妊娠すると、定期的に健診を受けたり、食事に気をつけたりします。具体的には、「飲酒を避ける」「規則正しい生活の実践」「体重の増えすぎに気をつける」など、健康に注意して日常生活を過ごされています。このように、妊娠中の生活はとても大切です。しかしながら、できることなら妊娠する前から「体」と「心」を整えておくのが理想なのです。

計画していなかった妊娠では赤ちゃんの発育不良や早産、死産が多くなるということは、以前から指摘されていました。さらに、発育不良で生まれた赤ちゃんは、将来、成人病にかかりやすくなるという説もあります。これは、栄養や酸素の不足などの悪い環境にいた赤ちゃんに病気の素因が作られ、生まれた後の環境によって病気を発症するのだと説明されています。

計画的な妊娠では、妊娠する前から健康に気をつけておくことができます。例えば、鉄分や葉酸を含めて栄養を見直す、虫歯などを治しておく、風疹のワクチンを打っておく、禁煙するなどです。これが赤ちゃんの健康にもつながると考えられています。


最近、産婦人科医の間では、「プレコンセプションケア」という考えが広まってきています。コンセプションというのは妊娠のことです。妊娠前の女性やカップルに必要な知識や情報を得てもらい、健康に過ごしてもらうことで、将来、元気な赤ちゃんが生まれ、健康な子供に育つことをめざしています。
国立成育医療研究センターには、プレコンセプションケアセンターのホームページがあり、詳しく記載されています。プレコンセプションケアのためのチェックシートも用意されており、「プレコン・チェックシート」と命名されています。

「プレコンセプションケア」では、現在、妊娠を考えている女性だけではなく、全ての妊娠可能年齢の女性が対象になります。また、女性だけではなく、カップルの相手も含まれます。「プレコンセプションケア」は欧米ではすでに確立し、実践されていますが、日本ではこれからです。

昔は、産婦人科は妊娠した女性が行く所というイメージでしたが、最近では、妊娠に関係なく、女性のかかりつけ医としての役割が期待されるようになってきています。当院のスローガン「すこやかな女性をはぐくみたい」に沿って、これからも、ひとりひとりの女性と真摯に向き合っていきたいと思います。

念のために申し添えますが、プレコンセプションケアというのは保険診療ではありません。国立成育医療研究センターをはじめ専用の外来を立ち上げているところもありますが、カウンセリングであり、保険適用はありませんのでご注意ください。


当院では、現時点で相談外来は設けていませんが、プレコンセプションケアの重要性をぜひご理解いただき、健やかな日々をお過ごしいただきたいと願っています。